取引先に送ったはずのメールが『届いていない』と言われたり、相手の迷惑メールフォルダに振り分けられてしまった経験はありませんか?
法人にとって、メールは重要なビジネスインフラです。メールが届かないだけで、信用を損なったり、取引機会を逃すリスクがあります。
本記事では、法人向けに「なぜメールが届かないのか」という原因と、その具体的な対策をわかりやすく解説します。
なぜ法人メールが届かないのか?よくある原因
法人で利用しているメールが相手に届かない、あるいは迷惑メールに振り分けられる場合には、いくつか典型的な原因があります。代表的なものを紹介します。
相手側の迷惑メールフィルタに引っかかっている
取引先のメールサーバーやセキュリティソフトは、迷惑メールを自動で判定しています。本文中に「今すぐ」「無料」「限定」などのスパムワードが含まれている場合や、不要な記号や装飾が多いメールは、正規のメールでも誤って迷惑メールに分類されることがあります。
送信元IPアドレスやドメインの評価が低い
迷惑メール送信元として過去に利用されたサーバーや、評判の低いレンタルサーバーから送信すると、ブラックリストに登録され、正しく送っても相手に届かないケースがあります。特に共有サーバーを利用している法人は注意が必要です。
送信ドメイン認証(SPF・DKIM・DMARC)の設定不足
最近のメールサービス(GmailやOutlookなど)は、送信元が正規のドメインかどうかを確認するために、SPF・DKIM・DMARCという認証技術を利用しています。これらの設定がされていないと「なりすましの疑いあり」と判断され、受信拒否や迷惑メール扱いになりやすいです。
添付ファイルが原因でブロックされる
実行ファイル(.exe)、圧縮ファイル(.zip)、サイズの大きいファイルなどは、セキュリティリスクが高いため相手側で自動的にブロックされることがあります。安全のためにファイル共有サービス(Google Drive、OneDrive など)の利用が推奨されます。
一度に大量のメールを送信している
社内から取引先リストに一斉送信を行うと、大量送信をスパムと誤認されることがあります。特に数百件以上の宛先に同時送信すると、相手側のサーバーで拒否される可能性が高まります。メール配信サービスを利用するのが望ましいです。
法人がすぐにできるメールの基本対策
「メールが届かない」「迷惑メールに振り分けられる」といったトラブルは、設定や運用を見直すだけで改善できるケースが多いです。ここでは法人がすぐに取り組める基本的な対策を紹介します。
送信ドメイン認証(SPF・DKIM・DMARC)の設定を確認する
まず最優先で確認したいのが、送信ドメイン認証です。
- SPF:このサーバーから送信してよいかを証明
- DKIM:メール本文が改ざんされていないことを証明
- DMARC:SPF・DKIMの結果を受信側に伝える仕組み
これらが正しく設定されていないと、相手のメールサーバーから「なりすましメールかもしれない」と判定され、迷惑メール行きになることがあります。ドメイン管理を担当する部署や外部ベンダーに依頼して確認しましょう。
自社ドメインのメールアドレスを利用する
フリーメール(Gmail、Yahoo!メールなど)からの送信は法人取引に適しません。信頼性の観点でも、自社ドメイン(例:@yourcompany.co.jp)を利用したメールアドレスを使用することで、受信側に正規の法人からのメールであると伝わりやすくなります。
件名・本文にスパム判定されやすい表現を避ける
件名に「今すぐ登録!」「完全無料!」などの強調表現が入っていると、フィルタに引っかかる可能性があります。本文でも過度な記号(!!!、★★★)やリンクの羅列は避け、シンプルで分かりやすい文章を心がけましょう。
添付ファイルはクラウドリンクで共有する
セキュリティ上、添付ファイルは迷惑メール判定の原因になりやすいです。可能であれば Google Drive、OneDrive、Box などのクラウドストレージを活用し、URLリンクで共有する方が安全です。
一斉配信はメール配信サービスを利用する
社員がOutlookなどから数百件に一斉送信すると、スパム扱いされるリスクが高まります。
マーケティングや案内メールを定期的に送る場合は、SendGrid、Cuenote、Mailchimpといった専用サービスを利用することで、到達率を大幅に改善できます。
法人が注意すべき運用上のポイント
基本的な設定を整えても、日々の運用で注意を怠るとメールトラブルは繰り返されます。法人として信頼性の高いメール運用を行うために、次のポイントを意識しましょう。
取引先に「迷惑メールフォルダの確認」を依頼する
重要なメールが届かない場合、受信側で迷惑メールフォルダに入っているケースは珍しくありません。初めての取引先や、システムから送信するメールについては、「迷惑メールフォルダに入っていないかご確認ください」と一言添えると安心です。
メールサーバー・セキュリティ設定を定期的に見直す
法人のメール環境は、レンタルサーバーやプロバイダ、Microsoft 365・Google Workspaceなど、提供元によって仕様が異なります。サーバーの利用状況やセキュリティルールを定期的にチェックし、最新の設定を維持しましょう。
社員教育を徹底する
迷惑メール判定は、メールの内容や送信方法にも影響されます。社員が以下を徹底することでリスクを減らせます。
- BCCを利用した正しい一斉送信
- 件名に要点を入れる(「請求書送付のご案内」など)
- 会社名・担当者名・連絡先を明記した署名を必ずつける
こうした基本ルールが守られていないと、受信側で「怪しいメール」と見なされる可能性があります。
自社メールがブラックリストに載っていないか確認する
一部のセキュリティ機関は、迷惑メール送信元をリスト化(ブラックリスト)しています。万一自社のIPアドレスやドメインが登録されると、多くの相手にメールが届かなくなります。
定期的に 「RBL(Realtime Blackhole List)」などの公開リストをチェックしておくと安心です。
RBL(Realtime Blackhole List/リアルタイムブラックホールリスト)とは、迷惑メールを送信している可能性が高いIPアドレスやドメインを登録した「ブラックリスト」です。
多くのメールサーバーは、このRBLを参照して「この送信元からのメールは危険」と判断し、受信を拒否したり迷惑メールに分類します。
RBLに登録される主な理由
- 過去にそのIPアドレスから迷惑メールが大量に送信された
- ウイルス感染したPCやサーバーがスパム送信に利用された
- 正しくない設定(認証不足やオープンリレー)が検出された
- 共有サーバー上の他社アカウントがスパム行為を行った
RBLに載っているか確認する方法
以下のような公開チェックツールで、自社のメールサーバーのIPアドレスやドメインを入力すれば、RBL登録状況を確認できます。
RBLに登録されてしまった場合の対応
- まずはウイルス感染や不正アクセスがないかサーバーを調査
- SPF/DKIM/DMARCなどの認証設定を見直す
- リスト管理者に「問題を解決した」と申請して解除依頼を行う
RBLは「誤判定」もあり得ますが、放置すると長期間メールが届かない状態になるため、定期的なチェックと早めの対応が重要です。
それでも改善しないときの対応
基本的な設定や運用を見直しても「メールが届かない」「迷惑メールに振り分けられる」問題が解決しない場合は、より専門的な対応が必要です。法人として信頼を守るために、以下の方法を検討しましょう。
メール配信システムの導入を検討する
大量のメールや重要な取引先への案内を確実に届けたい場合は、専用のメール配信システムの利用がおすすめです。
例:SendGrid、Cuenote、Mailchimp など
これらのサービスは、世界中の受信サーバーに対して高い到達率を確保できるように調整されています。
プロバイダやレンタルサーバーのサポートに相談する
自社の設定で解決できない場合は、利用しているサーバーやプロバイダのサポート窓口に相談しましょう。サーバーのIPがRBLに登録されていないか、送信制限がかかっていないかなど、専門的に調査してもらえます。
RBLに登録されていないか再確認し、解除申請を行う
もし自社のIPアドレスがRBLに登録されている場合は、原因を解決したうえでリスト管理者に解除申請を行います。解除には時間がかかることもあるため、早めの行動が重要です。
代替の連絡手段を確保する
どうしてもメールが届かない状況が続く場合は、電話やチャットツール(Teams、Slack、LINE WORKSなど)を併用して連絡を取り合うことが現実的です。法人間の取引では「連絡が途絶える」ことが最もリスクとなるため、二重の連絡手段を確保しておきましょう。
専門家やITベンダーに相談する
自社での解決が難しい場合は、ITサポート会社やセキュリティベンダーに相談するのも有効です。原因調査から設定代行まで依頼できるため、重要な取引先とのやり取りで損失を出す前に、専門家に任せる判断も必要です。
まとめ
法人メールが届かない原因の多くは、送信ドメイン認証の未設定・ブラックリスト登録・添付ファイルや一斉送信の方法にあります。まずは自社でできる基本対策を実施し、それでも改善しない場合は配信システムや専門サポートを活用することが、ビジネスの信頼を守る近道です。